坪単価マジックに騙されない
注文住宅で家を建てようと資金計画を練っていると必ず目にする「坪単価」という言葉。
家を建てる上で目安になるので、気にしてしまいがちですが、これほど「内容と実態が合っていない金額の目安」はありません。
では、どういうことか基本の部分から見ていきたいと思います。
小さな家ほど坪単価は高くなる
そもそも「坪単価」とは何かというと、ざっくりな話しですが、建物の本体工事代金を延床面積で割った金額が「坪単価」といいます。
たとえば、建物本体価格が1500万円で、延床面積が30坪なら、坪単価は50万円/坪となります。
しかし、この坪単価というのは、小さな家であればあるほど高くなります。
なぜかというと、30坪の家でも、60坪の家でも、キッチンは1箇所あり、浴室も1箇所あり、階段も1箇所あり、玄関ドアも1箇所・・・
という風に、家のサイズに関わらず必要最低限な設備の数量、つまりは設備固定費は同じだからです。
また、電気やガス、水道の基本工事という部分でも、家のサイズに関わらず最低限必要な工事という意味ではあまり金額は変わりません。
こういった家のサイズに関係なく必要な工事が建物本体工事の多くを占めている以上、どうしても小さな家の方が坪単価という意味では高くなりがちです。
大切なことは、「坪単価」ではなく、「トータルコスト」に目を向けるようにしましょう。
坪単価に含まれない工事がいっぱい!?
さて、坪単価とは、建物本体工事代金を延床面積で割った金額が坪単価とご説明させていただきました。
ここで素直に、建物本体工事代金というと、普通に考えれば新築工事に必要な全ての費用が含まれていると思いがちですが、実は違います。
実は“建物本体工事には含まれていない工事項目”がたくさんあるのです。
たとえば、
・屋外給排水工事
・屋外ガス工事
・産業廃棄物処理費
・建築確認申請費
・現場安全管理費
・監理諸経費
などなど・・・
たくさんあります。
実は「などなど・・・」と書いたのにはワケがあります。
それは、“建物本体工事に含まれない工事項目”の中身は、「ハウスメーカーや工務店ごとに違う」のです。
つまり、そもそも「建物本体工事」に何の工事が入っていて、「建物本体工事に含まれない工事」に何の工事が入っているかは、会社ごとに違いがあり、基本となる業界基準は「無い」のです。
つまりつまり!「坪単価」なんて、比較の“ものさし”には、ならないのです。
その比較の基本となる「坪単価」という意味のないものを基準にハウスメーカー・工務店選びをすると、痛い目に合います。
「A工務店には見積もりに含まれていたものが、B工務店にも含まれていると思ったら含まれていなかった・・・」
なんて、よくある話しです。
ですので、この「坪単価」というのは決して信用できない!
それくらいの感覚で“参考的”に見る程度にしておきましょう。
坪単価を下げてお客様集め!?
注文住宅において、このように坪単価は全く意味のない数字と言ってよいのですが、広告を見ていると大々的に“坪単価30万円”なんて、言葉が踊っていたりします。
「坪単価が30万円なら、30坪の家を建てるなら、900万円で建つのかあ」
なんて思った方も過去にはおられるかもしれません。
というか、いまだにそう思っている方も一部おられるみたいですが。。。
当然にそんな金額で家は建ちません!
上記にも書いたように実際の見積りでは、坪単価で計算する“建物本体工事”以外に、“建物本体工事に含まれない工事項目”が別途追加されていく訳です。
実はこの2段階方式の金額が坪単価のカラクリの真骨頂です。
つまり、広告で大々的に打つ金額の「坪単価」を大幅に下げて、お客様を集客し、その後お客様と商談になった段階で、別途ご提示する、“建物本体工事に含まれない工事項目”の金額を大幅に上げれば、「トータル金額」は変わらないのです。
たとえば、A工務店とB工務店があるとします。
■A工務店の場合
・建物本体工事 坪単価50万円×30坪=1500万円
・建物本体工事に含まれない工事=100万円
トータル金額=1600万円
■B工務店の場合
・建物本体工事 坪単価35万円×30坪=1050万円
・建物本体工事に含まれない工事=550万円
トータル金額=1600万円
トータル金額を見るとどちらも1600万円の建物工事金額となります。
しかし、「坪単価」だけを見比べる大きく金額が違います。
これを見て、果たしてA工務店は値段が高いのでしょうか?
B工務店は本当に安いですか!????
全ての会社ではありませんが、坪単価を全面に出して大々的な広告をしている一部のハウスメーカー・工務店には、実はこんな“カラクリ”があるんです。
注文住宅の世界で、この坪単価マジックは本当に怖いもので、見ていただいたように実はいくらでも「価格の調整」ができてしまいます。
このような坪単価マジックに騙されずに、大切なのは最初にも書きましたが「トータルコスト」で、検討していくことが重要です。
もちろん比較する場合は「同じ間取り・同じ仕様」という見積り条件を揃えるのは当然のことです。