「暮らし」があって「家」がある
新しい暮らしをはじめるまでに一番手間暇がかかり、取得費用も一番高くつくのが、分譲マンションでもなく、分譲一戸建てでもなく、注文住宅です。
大変さは一番大きな注文住宅ですが、デザインや間取りは自由に選べるし、たとえばペットとの暮らし、庭やガーデニングに囲まれた暮らしなど、楽しみも人一倍大きい。
それぞれの家族の考え方やライフスタイルにもよるが、家族がじっくり腰を落ち着ける拠点づくりを目指すなら、注文住宅の建築が一番だと言えます。
暮らしのイメージ先行
はじめての家づくりを考える人にとって、何よりも大切なのは、自分達の暮らしのイメージづくりです。
決して頭の中でこねあげた「理想の」間取りではありません。
試みに、“素人”の「設計」は往々にして、玄関、リビング、ダイニング、水廻り、そして個室という、住まいの「パーツ」の組み合わせになってしまいます。
だから、現在の住まいと似たり寄ったりのものになってしまうわけです。
しかし、具体的な部屋の組み合わせ、つまり間取りを考えるのはずっとあとの作業なのです。
そして、その時には工務店などのプロに知恵を出してもらえば良いのです。
家づくりで最初に必要なのは、間取りを考えることではなく、「新しい暮らしをイメージ」することなのです。
そもそも、家は暮らしの容れ物。
まず、具体的な暮らしのイメージがなければ、容れ物の形が見えてこないのは当たり前なのです。
建売住宅や分譲マンションなど完成している建物を購入する場合なら、先に家という容れ物があり、それに合わせて人が暮らしを考えることになります。
しかし、注文住宅は何もないところに家をつくっていく作業。
自由に夢を実現できるのだから、まず暮らしのイメージづくりこそ必要なのです。
新しい家のテーマを思い描く
家族構成やライフスタイルによって、暮らしのテーマはそれぞれ異なるのが普通。
では、新しい住まいでどんな暮らし方をするのか、したいのか。
まずそのイメージを思い描きましょう。
新しい家のテーマと言ってもいいかもしれません。
たとえば
・大きなテーブルにいつも家族が集まり、それぞれの仕事や勉強をするような暮らしがしたい
・家族の息抜きはそろって映画鑑賞。リビングを本格的なホームシアターにして楽しみたい
・大きなウッドデッキやバルコニーでバーベキューをしたり、キャンプ道具の手入れをしたい
・パーティをするのが好きだからアイランドキッチンにして、大勢で楽しみたい
など、どんな暮らしが希望なのか、まずは書き出してみましょう。
ライフステージの変化を考える
住まいは一度建てたら、20年、30年あるいはもっと長期間にわたって住み続けるものです。
現在の生活や家族構成が、そのまま続くことはありえません。
住まいは、今の暮らしの容れ物であるだけではなく、将来の暮らしにも対応したものでなければなりません。
たとえばどん変化があるのかというと、
・大学入学や結婚により子供が家を出る
・転勤で単身赴任する
・定年退職により生活が家中心になる
・高齢者と新たに同居する
などが、考えられます。
こうした変化を有る程度予想し、それを計画に入れて家づくりを工夫したり、建築に着手する時期を決めたりすることが必要となります。
また、住宅ローンは高額の借入になるので、返済期間を長くし、月々の返済額を低く抑えるのが合理的だし一般的です。
それでも、定年退職前には返済が終わり、退職金をローン返済に回さずに済むような計画が理想的ですが、現実には、なかなかそうはいきません。
その点からも家づくりに着手する時期は重要です。
家づくりにあたって、まず、家という「ハード」を考える前に、暮らしという「ソフト」の内容を検討する必要があることはおわかりいただけるかと思います。
この作業は、具体的な設計案を検討していく段階で、さらに具体化していくことになります。
施主の役割は、自分のイメージを家づくりに関わる職人さん・業者・工務店に伝えることがもっとも重要なのです。