計画的に風の通りの道をつくる
風が抜ける家は、とても快適ですよね。
エアコンの風では得られない自然な風の魅力は誰もが“好き”と言えるのではないでしょうか。
生活の中に風を取り入れることは、暮らしの充実度アップにもつながります。
また、風が抜ける通風性の高い家は、住む人だけでなく、木造住宅の家そのものにとっても良いことです。
しかし、共働きのご家庭も最近では多く、平日は日中は家を閉めっぱなしで週末に少し窓を開ける程度、という方も多いのではないでしょうか?
だからこそ、家を新築するときには、この「風が抜ける道を計画的」に作りたいものです。
家の配置と通風性
敷地に対して、建物をどの位置に配置するかで、風の通りは大きく変わります。
ポイントとしては「北風を取り込む」こと。
そして「北から取り込んだ風が反対側の南側から抜ける」という、風の導線をつくりたいものです。
北の窓から取り込んだ風が、渦をつくりながら、南の窓へと流れていく。
しかし、大阪や京都などの多くの敷地では住宅が密集している住宅密集地です。
ドラマのような大きな敷地で北から南へ風がスムーズに流れるという訳にはいきません。
だからと言って、窓を全くなしにすれば、風は全く流れてきません。
住宅密集地であっても、北側と南側には風が抜けるように窓を配置しましょう。
密集地では風が滞留しがちですが、北側と南側へ窓を配置すれば、それなりに風は抜けていくものです。
また、北の窓と南の窓は、できるだけ一直線上にあればさらに理想です。
北の窓⇔部屋を間仕切る室内建具や廊下⇔南の窓
という風の流れが一直線であればベストですし、それに近い形で窓や部屋の建具など配置できるようであれば、実現できるようにしましょう。
また、建物全体の配置としては、建物の北側は立地によっては北側斜線の制限を受けることもあるため、通風の点も含めて、敷地に余裕がある場合は北側を空けるようにしましょう。
こうすることで、北風を取り入れやすくなります。
建物の間取りと通風性
間取りでの通風性を考えるうえで重要なのは、「対面しあう2枚の窓」です。
風の「入口」と「出口」をバランスよく作ること、特にそれが「対面しあう2枚の窓」だとベストだと言えます。
さらに、窓の大きさも同じサイズであればベストです。
できるだけ同じような大きさの窓で統一したいものです。
但し、引違の窓と、縦すべり出し窓のような装飾窓では引違窓の方が金額が高くなる傾向にあり、それぞれの窓の金額も異なるため、予算を抑える場合は、2枚の内1枚は装飾窓でもいいでしょう。
また、窓の配置としては「南北の配置」がベストです。
これまで書いてきたとおり、北風を取り込んで南へ風を流れる風導線を取るのがセオリーとなります。
但し、北側は比較的に浴室や洗面所・トイレなど水回りを配置することが多くありますので、「南北の配置」がどうしても難しい場合は、「東西の配置」でもいいかと思います。
また、部屋が一面にしか外壁に面していない場合は「対面しあう2枚の窓」は物理的に不可能です。
そのような場合は、「上下に窓を配置」するようにしましょう。
「対面しあう2枚の窓」に比べると通風性は下がりますが、「上下に窓を配置」にすることで、風の「入口」と「出口」を確保することはできます。
このほか、吹き抜けや階段など、1階と2階という「フロア全体での風の上下の流れ道をつくる」ことも有効です。
室内建具と通風性
お出かけの際や就寝中など常に窓を開けっぱなしにすることができない場合もあるかと思います。
そんな時には、「建具を利用した風の流れ」をつくりましょう。
簡単にできることとして、家全体での空気の流れ道を確保するために、「引戸で建具を開けたままにしておくこと」です。
こうすると、廊下から部屋へ、部屋から廊下へ風の流れ道ができます。
また、引戸が難しい場合は、建具の上部に通風口を設けたり、室内窓を配置することで、窓閉鎖時の風の循環を確保することもできます。
「家の配置」「建物の間取り」「室内建具の活用」の3つの要素
このように風が抜ける家づくりには「家の配置」「建物の間取り」「室内建具の活用」の3つを基本として考えていくとわかりやすいのではないでしょうか。
更地の土地状態では、どの方向からどのような風が流れていくのか、隣地に建物が建てばいままでとは違う風の流れができる等、通風性を予測することは非常に困難です。
ですので、通風性を考える場合は、何か一つの対策をするのではなく、「家の配置」「建物の間取り」「室内建具の活用」の3つの要素を複合的に考えて、建物の計画をしていくことが重要です。