坪単価とは?注文住宅の前に知っておきたい
注文住宅は、建売住宅の様にすでに出来上がっている建物と土地をセットで購入するのではないため、完全オーダーメイドの家づくりになります。
自由な間取りを設計したり、内装材や外装材、住宅設備機器などを自由に選ぶことができるため、自分のたちの家族構成や暮らし方に合わせて家を建てることができるのが、注文住宅の魅力といえます。
しかし、その分、一棟一棟で建物の間取りや仕様が異なり、また敷地の条件も異なるため、一律で定額という訳にはいきません。
これは注文住宅は、完全なオーダーメイドであるという性質上、仕方のないことです。
建築コストの目安となるのが「坪単価」
ただ、全く予算がわからなければ、注文住宅で家を建てようかどうしようかの判断はつきにくいものです。
多くの方にとって家づくりの経験ははじめてのことであり、特に予算面はどんな方も不安があるでしょう。
しかし、ピッタリな予算はわからなくても、おおよその目安となる建築予算は知りたいものです。
そんな時に役立つのが「坪単価」です。
「坪単価45万円」とか「坪単価50万円」などと書いている広告などを見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。
「坪単価45万円」なんて書いていると、誰でもわかりやすくて便利なように見えますよね。
でも、この「坪単価」の記載金額は、“そのまま鵜呑みにすることはできません。”
なぜなのか???
そんな疑問にもお応えしていきたいと思います。
ここでは、「坪単価」とは何か?
また「坪単価に隠された事実とは何か」など、注文住宅の費用の基本を押さえつつ、これからご紹介していきます。
注文住宅の費用の内訳とは
まず、「坪単価」とは何なのかを理解するには、基本となる「注文住宅の費用の内訳」を知る必要があります。
では、「注文住宅の費用の内訳」をここでご紹介したいと思います。
ただし、ここでご紹介する「内訳項目名」は、各社で名称が異なる点はご理解の上、御覧いただけたらと思います。
1.建物本体工事
建物本体基本工事
建物本体基本工事に含まれるのは主に下記のような項目です。
・構造躯体:基礎や柱・土台や梁・斜材、屋根小屋組みなどの木構造の羽組となる部分
・内装材:床材や室内建具、クロス、造作工事などの仕上げ材や下地材を含む部分
・外装材:屋根や外壁材、雨樋やサッシ工事を含む部分
・インフラ:照明やコンセントなどの電気工事、ガス給湯器を含めたガス工事、飲料水や汚水雑排水などの給排水工事などのインフラ設備工事
・住宅設備機器:キッチン、ユニットバス、洗面化粧台、トイレなどの主に水廻り設備機器
2.建物外付帯工事
建物本体基本工事に付帯する工事。
土地や建物の条件により必要な工事の内容や金額が異なるが、家を完成させるために必須の建物本体に関する工事。
屋外給水配管工事
キッチンや浴室、洗面やトイレなどの各所の建物屋内の給水配管と、道路からの引込給水配管をつなぐ、屋外の給水配管工事。
建物の外回りに埋設して施工する。
屋外汚水・雨水配管工事
給水配管と同じく汚水が出る水廻りの配管と、道路の汚水配管とをつなぐ屋外汚水配管。
地域により雨水などの雨水配管と汚水配管を合流させて良い地域と、雨水と汚水を分けて排水する分流式と分かれる。
屋外ガス配管工事
屋内のガス配管を道路引き込みガス本管とをつなぐガス配管工事。
給排水配管工事と同様に、建物外の外回りを土の中に埋設して配管工事をおこなう。
仮設工事
仮設工事には、主に作業床としての足場工事、工事現場用の仮設トイレや、工事用の電気や水道工事などを指します。
産業廃棄物ゴミ処理費
現場で出た木材廃材や梱包段ボールなどの産業廃棄物やごみ類を処分する費用。
現場監理費
工事の着工時から完成時までの工事全般の現場監理経費。
安全管理費
上棟時のレッカー搬入時や、狭小地での工事になる場合の地盤工事時や解体工事時の警備員ガードマン手配、近隣の工事車両用の貸し駐車場代など、現場を安全安心に進めていくための管理費。
地盤調査費
建物を建てる宅地の地盤が強く安定性の高い地盤なのか、軟弱で不安定な地盤なのかを調査するのが地盤調査です。
地盤調査の結果、軟弱な地盤であり建物の安定性を欠くと判断された場合は、別途で地盤補強工事が必要となります。
3.建物外諸費用
設計料・実施設計料
平面図や立面図・配置図などの基本図面に加えて、造作やインフラ計画等の詳細を記載した図面の作成費用。
建築確認申請費
平面図や立面図などの設計図書を揃えて、申請書を作成し、役所へ建築の許可を得るための建築確認申請をおこないます。
自社で建築確認申請を出す工務店もあれば、外注の設計事務所へ作成代行する場合もあります。
構造計算費
木造3階建てや長期優良住宅などの申請がある場合は必須。
その他工務店やハウスメーカーによっては、上記の場合に関係なく全棟で構造計算を実施する場合もある。
各種申請費
長期優良住宅や低炭素住宅、フラット35など、建築確認申請とは別に、個別に必要に応じて申請する。
各種申請費には、申請書類の作成や印紙代なども含まれる。
検査立ち合い費
役所や保険会社による現場検査への立ち合い費用。
基礎工事の配筋検査、上棟後の建築金物や筋交いなどの構造検査、透湿防水シート完了後の外装下地検査、建物完成時の完了検査などがある。
工務店の設計・現場監理者が立ち会ったり、建築確認申請を担当した設計士が立ち会う場合ある。
瑕疵保険
品確法に基づく主要構造部および雨水の親友を防止する部分の瑕疵保証に対する10年保険の費用。
4.その他工事
地盤改良工事
外構工事
エアコン工事
カーテン工事
照明器具工事
5.諸費用
収入印紙代
火災保険代
登記費用
住宅ローン費用
「坪単価」に含まれるのは「建物本体工事のみ」
ここまで「注文住宅の費用の内訳」について見てきました。
注文住宅と一言で言っても、費用にはたくさんの費用項目に分けられるというのがわかりましたね。
主な「注文住宅の費用の内訳」は以下でしたね。
1.建物本体工事
2.建物外付帯工事
3.建物外諸費用
4.その他工事
5.諸費用
では、「坪単価」と呼ばれる金額には、この上記の「注文住宅の費用の内訳」1~5の内、どこまでを含むと言われているか、わかりますか?
上記の項目を全部含んでいるわけではないことは、みなさん予想できていることでしょう。
では、答えは、、、
1.建物本体工事
のみです。
つまり、2.建物外付帯工事や、3.建物外し費用など建物に関する必須の工事項目ですら、「坪単価」には含まれていないんです。
4.その他工事も場合によっては必要ですし、5.諸費用も、現金払いか住宅ローンかで金額の違いはあれど必ず必要になる予算です。
ですので、「坪単価」の金額だけで、家を建てることができるわけではないのです。
「坪単価」に加えて、建物外付帯工事や建物外諸費用、また多くの諸費用関係も費用としては必要になってくるのです。
間取りによって「標準設計外工事」も必要
さらに、この「坪単価」には、各社で設計基準が設けられていて、その範囲であるなら、記載通りの「坪単価」で費用の計算ができるとなっています。
たとえば、基本的な設計基準で
「屋根は片流れ屋根で、屋根勾配は4.0寸のスレート葺きとする」
と決まっていたとします。
そして、実際に設計の段階で、屋根に関する要望を出したとします。
「屋根形状を切妻屋根に変更したい」
「屋根勾配を6.0寸に変更したい」
「屋根材をスレート葺きから瓦葺きに変更したい」
となれば、変更に伴う「オプション工事」や「標準設計外の変更工事」として、費用はアップします。
このように「坪単価」内には、各社で一定のルールを設けていて、標準工事の範囲内と、標準工事外のオプション工事を分けているのが一般的です。
「坪単価」と書いているからといって、どんな変更工事も「坪単価」の範囲内でできるわけではないことは覚えておきましょう。
「坪単価」の内訳は各社それぞれ異なる
「坪単価」とは、建物本体工事のみというのが一般的であり、建物外付帯工事や諸費用は別途であると説明してきました。
ただし、ここで大きな注意点が必要です。
それは何かというと、
「坪単価」や「建物外付帯工事」など、各項目にどの工事が含まれているのかは、10社あれば10社すべて異なるということです。
どういうことかと言うと、
上記の「建築確認申請費」は「建物外諸費用」に含まれるといいました。
多くの工務店では、この「建築確認申請費」は、「建物本体工事」には含まない、つまり「坪単価」には含まれないのが一般的です。
ただ工務店によっては、この「建築確認申請費」を「坪単価」含んでいる工務店もあるのです。
つまり、どの工事が「坪単価」に含まれているのか、ふくまれていないのかは、工務店に応じてそれぞれ違うということです。
なぜこのような事態になったかというと、「坪単価には〇〇工事は含めなさい、〇〇工事は坪単価に含めず別途としなさい」という、ルールが無いのです。
だから、各社によって「坪単価」の中身はもちろん、「建物外付帯工事」や「建物外諸費用」と中身はもちろん、名称すらも統一されていないということになります。
「坪単価」はあくまで参照程度の目安にする
このように「坪単価」に含まれる工事内容は各社でさまざまであり、この「坪単価」だけで正確な見積りを作ることはできません。
ただ、全く参考にならないわけではなく、「坪単価」をみることで、
「この工務店は比較的に高価格帯の住宅を得意としているのだな」とか「ここは価格をおさえた注文住宅もするんだな」などは把握することができます。
最終的にはやはり間取り図などの設計図書の作成を依頼し、正確な見積書を受け取って、契約するかしないかの判断は必要になります。
「坪単価」はあくまで参照程度の目安にしておくと良いでしょう。